遺伝子治療
掲載する遺伝子治療に関する情報につきましてはライソゾーム病患者家族の会協議会(全国ファブリー病患者と家族の会、ムコ多糖症患者家族の会、ゴーシェ病の会、仮称・NPO法人全国ポンぺ病患者と家族の会)メンバー及び関係する医療機関外からの企業への問合せは支障をきたす場合がありますので御遠慮下さい。*サイトポリシー参照
アステラス製薬
遺伝子治療薬AT845 遅発型ポンぺ病の成人患者を対象としたFORTIS試験の予備的な安全性と有効性に関する追加データ判明
アステラス製薬 HP より抜粋(2023.2)
アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:安川 健司、以下「アステラス製薬」)は、遺伝子治療薬AT845を評価する第I/II相試験(FORTIS試験)において、予備的な安全性と有効性に関する追加のデータが得られたことをお知らせします。本データは、第19回WORLDSymposiumTM2023で発表します(ポスター番号#95)。AT845は、遅発型ポンぺ病(Late-Onset Pompe Disease:LOPD)の成人患者を対象に酸性α-グルコシダーゼ(Acid alpha-glucosidase:GAA)を発現する機能性GAA遺伝子を筋肉細胞内に直接送達するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子補充療法です。
FORTIS試験は、多施設、非盲検、用量漸増の第I/II相試験で、LOPDの成人患者を対象にAT845の安全性と忍容性に加え、探索的に有効性を評価しています。データカットオフ日の2022年9月15日時点で、FORTIS試験に被験者4名が組み入れられ、AT845の投与(単回、静脈内注入)を受けています。そのうち、2名は3x1013 vg/kg、他2名は6x1013 vg/kgの用量が投与され、最大78週間までの安全性が経過観察されています。被験者4名のうち3名は、AT845投与後にLOPDの標準治療である酵素補充療法(Enzyme Replacement Therapy:ERT)の投与を中止しました。ERT投与中止後、それぞれ19、44、51週時に測定された身体機能に関する指標は安定していました。ERTを投与中止した被験者を含む全4名の継続的な評価では、努力肺活量や6分間歩行試験などの身体機能に関する評価項目において、引き続き安定していることが示されました。また、ポンペ病特異的な疲労や日常生活動作についての患者報告アウトカムも安定していました。
AT845の忍容性はおおむね良好で、AT845投与下の有害事象(Treatment Emergent Adverse Events:TEAE)のほとんどは軽度(グレード1)であり、AT845との関連性はないと考えられています。1名の被験者で、注射部位反応と思われる事象が見られましたが、ジフェンヒドラミンとアセトアミノフェンの経口投与で改善しました。被験者3名が軽度から中等度の一過性の高トランスアミナーゼ血症を発症し、AT845に関連している可能性があると判断されましたが、3例ともステロイド投与量を変更することで改善しました。6x1013 vg/kgを投与された被験者1名にグレード2の末梢性感覚多発性ニューロパチーの事象が報告され、2022年6月に米国食品医薬品局(FDA)から臨床試験の差し止め指示を受けましたが、2023年1月に差し止めは解除されました。
塩野義製薬
ポンペ病に対する新規治療薬候補の導入に関するMaze社とのライセンス契約の締結
塩野義製薬 HP より抜粋(2024.5)
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、このたび、ポンペ病に対する新規治療薬候補であるMZE001の導入に関するライセンス契約を、Maze Therapeutics社(本社:米国 サンフランシスコ、CEO:Jason Coloma、以下「Maze社」)との間で締結しましたので、お知らせいたします。
ポンペ病は、細胞内でのグリコーゲンの分解に必要な酵素が生まれつき足りないために、全身の細胞(特に筋肉の細胞)にグリコーゲンが蓄積することで、筋力の低下や歩行障害、呼吸器障害、心機能障害など様々な症状を発症する先天性の代謝異常疾患です。世界でのポンペ病の患者数は5 万人と推定されています。現在、ポンペ病の治療は、グリコーゲンの分解に必要な酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)を補充する酵素補充療法(以下、「ERT」)が中心ですが、単独の治療では症状の改善効果やその持続性に多くの課題が存在し、新たな治療選択肢が求められています。
Maze社から導入したMZE001は、同社が設計・開発した低分子の経口薬で、米国では希少疾患用医薬品の指定を受けています。本剤はグリコーゲンの合成を担う酵素であるGlycogen synthase1(GYS1)を阻害し、筋肉中のグリコーゲン濃度を低下させることで症状の改善が期待でき、既に実施されているPhase1試験において、筋肉中のグリコーゲン濃度の低下作用が確認されています。また、既存のERTとは作用メカニズムが異なることから、単剤に加え、ERTとの併用での治療効果も期待できます。今後、MZE001の単独療法、ERTとの併用療法のそれぞれの適応を目指して、当社がPhase2試験を開始いたします。
本契約の締結により、当社はMZE001の全世界における独占的開発権・製造権・販売権を獲得します。また、Maze社に対しては、契約締結に伴う一時金(150百万ドル)と、今後の開発進展や承認の取得、製品上市後の販売額に応じたマイルストン、および販売額に応じたロイヤリティーを支払います。なお、本契約は米国ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法(HSR法)に基づく、待機期間の満了を条件としていましたが、2024年5月10日付で待機期間が満了しました。
What is gene therapy? 遺伝子治療とは何ですか?
Gene therapy is a form of treatment involving the administration of genetic material to patients for the purpose of providing a clinical benefit. It is designed to restore the presence of normal proteins to treat a patient’s disease. Gene therapy works by introducing a functional copy of a gene into the cells that contain the defective version of that gene, allowing the cells to produce the normal protein. Gene therapy products are composed of “vectors,” which are typically viruses that have been engineered to deliver a therapeutic gene to a patient’s cells. Gene therapy vectors direct a patient’s cells to make a new protein that substitutes for a defective protein in the patient. Once the cells are able to produce the correct protein, gene therapy may ultimately lead to improvement in the patient’s symptoms.
遺伝子治療は患者への遺伝物質の投与を伴う治療の一つの形です。臨床的な利益の提供を目的としています。その遺伝物質は患者の病気を治療するために正常なタンパク質が存在し直すように設計されています。遺伝子治療は機能的な遺伝子のコピーを欠損遺伝子をもつ細胞へ導入することによって行なわれます。これにより細胞が正常なタンパク質を産生するようになります。遺伝子治療の製品は「ベクター」が含まれています。これは一般的には治療のため遺伝子を患者の細胞へ輸送するウイルスです。遺伝子治療ベクターは患者の細胞へ、欠損タンパク質に取って代わる新たなタンパク質を作るように命令します。一度細胞が正常なタンパク質を産生することができれば、遺伝子治療が患者の症状を改善する最後の治療につながるかもしれません。
What is adeno-associated virus? アデノ随伴ウイルスとは何ですか?
Adeno-associated virus (AAV) is one of the most frequently used viral vectors for gene therapy. A small virus that is common in humans, AAV is not known to cause disease. When engineered as a vector for gene therapy, AAV has a known clinical track record, is nonpathogenic and is already approved for use in one product. It is also currently being investigated in multiple clinical trials. Given the promise of engineered AAV vectors for one time administration of gene therapy, and their ability to harness the cell’s own systems to encourage normal protein production, Audentes is exploring the use of adeno-associated virus to address diseases caused by a single gene modification (also known as monogenic diseases) such as X-Linked Myotubular Myopathy (XLMTM), Crigler-Najjar Syndrome (CN), CASQ2-related Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia (CPVT) and Pompe disease.
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療のために最も頻繁に使われるウイルスベクターの一つです。この小さなウイルスは人間の体内に一般的に存在しており、AVVが病気を引き起こすことは現在確認されていません。遺伝子治療のベクターとして設計するならば、AAVは既知の臨床実績があり、非病原性で、ある製品において使用することが既に承認されています。現在も複数の臨床試験で調査されています。細胞へ正常なタンパク質の産生を促進させることができる、遺伝子治療のために設計されたAAVの希望を与えるため、Audentes社は一つの遺伝子の修飾から引き起こされる病気に対処するために、アデノ随伴ウイルスの利用法を調査しています。それらの病気は例えば、X連鎖ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)、クリグラー・ナジャール症候群(CN)、CASQ2関連カテコールアミン作動性多形性心室頻脈(CPVT)、ポンペ病です。